渋谷には象がいる。なまめかしい観音様と。

 宮益坂には狼がいるが、明治通りには象が居たりする。
それも明治通りに直面して、しかも渋谷~原宿間。そのちょうど真ん中あたりにお寺が一つあるのだけれど、門の石柱の上に象が一匹づつ、ちょんと乗っかっている。シンプルで直線的な造形の、ちょっとアールデコっぽい象さん。高いところにさりげなくあるので、気づきにくい。土日は相当な数の人がその前を行き来しているけれど、象さんに気が付いて写真撮ったりしている人は見かけたことがない(わざわざ写真にとるほどじゃないか)。


 象さんの門を入ると右手に六地蔵がある。多少不謹慎な言い方だけど、門の影に隠れて影薄い感じ。六地蔵は渋谷にはポツポツあるが、ここお地蔵様はマイルドかつオーディナリー。
 むしろ注目すべきは、六地蔵の前にいる石の招き猫。これが造形的になかなかイイ!張子や陶器の招き猫にはない力強さがある。江戸時代ぐらいの作だろうか。全国の猫好きは、この石猫を見ずして、猫好きを名乗ってはいけないのではないかと言えなくはないだろう石招き猫の額にコインを乗せておくといつのまにかなくなっており すると不思議と商売繁盛千客万来なんだそうだ、、、と無責任に言っておこうと思ったら、写真撮りに行ったら5円玉が本当に額に置いてあった!

 まっすぐ伸びた参道の突き当りにお寺の本堂がある。いまどきの都会の寺のように鉄筋コンクリート3階建てではなく、ちゃんと木造で唐様の窓付き。瓦屋根も大きくて立派、庇の下にも木彫りの象もいる。こちらは葛飾北斎の象みたい。

 こちらのお寺さんは、長泉寺といって創建は11世紀(要するに千年前)という歴史ある由緒正しいお寺。本尊は釈迦如来だが、渋谷金王丸ゆかりの「人肌観音」が有名。円山町のホテル街に安置したいような艶かしい観音様だけど、実際はかなり勇ましい観音様らしい(詳しくはこちら)。金王丸は金剛明王の化身と敵から恐れられていたんので、金王丸が寵愛していた若衆を神格化する必要が生じた結果の伝説ではないだろうか、などともっともらしい説を言ってみたり。

 本堂の中
は格天井でかなり立派。天井が高いので広々していて、
ここで葬式をしてもらいたい気になってしまうぐらい。本堂の中を特別料金で海外からの観光客に見せたら、本堂の維持費ぐらい簡単に賄えるのではないでしょうか、御住職様。渋谷観光ビューローは是非ここを観光コースに加えてほしい。ただしムスリムの人にはお薦めできないけど。

と、ここまでは観光スポットの案内に終わっているのだけれど、これで終わらないのが古いお寺らしいところ。(後編に続く)