渋谷暗黒巡礼 Dark Pilgrimage in Shibuya

見ようとしても誰にも見えない渋谷、見えてるのに誰も見ようともしない渋谷

November 2014

道玄坂上の怪異 mysteries on the hill top



道玄坂上には秘密基地がある。

 道玄坂を登ったところ、交番があるあたりが道玄坂上。渋谷駅から約500m、ゆっくり歩いて7-8分。博報堂の研究によると、駅からこのぐらい離れると「街はずれ」になるらしい。確かに、渋谷駅から500-600mあたりから、繁華街が終わって、戸建の住宅も現れ始める。中途半端な「外れ」の場所だからかもしれないが、道玄坂上あたりには怪しい店や謎の店がぽつぽつある。

 家の近くの電柱にわけのわからない広告「
ヒミツキチラボ とこでく」が貼ってあった。秘密基地研究所って何?「とこでく」って何?と思っていたが、秘密基地は道玄坂に面したところにあった。ここは、リアル脱出ゲームや謎解きイベントの秘密基地のようだ。新しいイベントの企画を実験するラボだとすると納得のネーミング。謎の電柱広告は謎解きのヒントなのかもしれない。

 ラボはもう一つある。とあるマンションの1階にある「
オープンラボ」。こちらのラボは怪しいというより、謎だ。何の研究をしているのか、よくわからない。なんでも、「インスタレーションやデジタルデバイスの分野」のことをやっていて海外でも何とか賞をとっているらしい。

 「
夜の図書室」もある。「夜」と言っても、そっち系の本の専門店ではない。本当に本が壁一面に並んでいる図書室。本の貸出しもやっている。営業は18時から25時。室内はやっぱり夜っぽい。大二病をこじらせた読書女子(死語?)とか居そう。

 そんな中で、なんといっても怪しい感じがするのが、「道玄坂画廊」。道玄坂に面したビルの一階に、歩道に面して絵を飾るショーケースがある。そこにいつも怪しげな油絵がかけてある。絵はときどき変わるのだが、どれも作者は同じ。今かけてあるのは、タイトル「
地獄太夫」。その絵がすごい。もう、あっちに行ってしまっている。あっちといっても草間弥生方面ではなくて、晩年のゴッホ。上の階に画廊があるんだろうと思っていたのだが、ビルのテナント案内を見ると、画廊はない。。。ということは、絵1枚だけしか飾れないショーケース1つの画廊ということか!

 念のために言うと、道玄坂上は 怪しい店だけじゃない。アンティークショップとか、今どきな陶器店とか、ワイン専門店とか、コジャレタ系のショップもある。道玄坂上から駒場の方へ下がっていくと、アンティークショップやインテリアパーツショップとか、アクアリウムショップとか、オーガニックなヘアサロンとか、点々と続いている。なんだか目黒通りみたいな感じになる。道玄坂上は都市と郊外の境界にあるグレーゾーンなのかも。


渋谷の死刑台 jailhouse rock


渋谷には刑務所があった。

 東京にある刑務所というと、日本最大の刑務所「府中刑務所」。
すでにない刑務所だと、A級戦犯が収監されていた「巣鴨プリズン」(いまの池袋サンシャイン60)。この二つは小説やドラマにときどき出てくるから、結構知られていると思う。

 こういう一般の刑務所とは別に、戦前は軍の刑務所もあった。渋谷は当時、日本帝国陸軍の一大拠点だったので、東京陸軍刑務所もあった。虎ノ門にあった徒刑場を移設したらし
い。軍の刑務所が一般の刑務所と違うのは、刑罰として囚人に軍事訓練させたり、重い砲丸を運ばせていたりしたところ。だから、代々木練兵場(今の代々木公園からNHKにかけて)の端に刑務所を建てるのはちょうどよかったのだろう。

陸軍刑務所の敷地は、NHKの南側から東急ハンズのあたりにかけて広がっていたが、1945年の終戦で陸軍刑務所は廃止されてしまった。今の渋谷区役所や渋谷公会堂、税務署、小学校などの公共施設は陸軍刑務所の跡地に建てたものだ。

 渋谷公会堂(旧
CCレモンホール)からアムウェイ・ビルの方に坂を少し下って、渋谷法務局(税務署)の角に二・二六事件の慰霊の観音像が立っている。いまだに献花が絶えない。二・二六事件で攻防があったのは永田町方面だし、慰霊碑がなんでここにあるのか不思議に思っていたが、二・二六事件の実行犯がここに収監されていたようだ。二・二六事件の裁判の判決で16人が死刑となっている。長崎のキリシタン磔刑か。(あれは26人か)
 いまはなき市ヶ谷刑務所跡地の富久町児童公園や、巣鴨プリズン跡地の東池袋中央公園には刑死者慰霊碑が立っている。慰霊碑のあたりに刑死場や絞首台があったと言われている。ということは、渋谷の二二六事件慰霊碑のあたりに死刑台があったのだろう。

 全国パワスポガイドによると
二・二六事件慰霊碑は、恋愛・婚活パワースポットなんだそうだ。慰霊碑の前で告白やプロポーズをすると成功するらしい。青年将校の霊が応援してくれるという説と、二二六で「夫婦ロック」だからという説があるそうだ。場所としては、もろ心霊スポットなんだけどな。慰霊碑の前でプロポーズの記念写真は撮らないように。ほら、後ろ、後ろ!

・・・と茶化してしまったけど、陸軍刑務所でもっと恐ろしい事件があった。終戦直前、米軍の空襲で刑務所は火災となり、収監されていた米軍捕虜62人が逃げ場を失って焼死した。戦後、
陸軍刑務所長は管理責任を問われ、BC戦犯の裁判で死刑を宣告された。刑務所の管理不行き届きだったのか、どうしようもない状況だったのかわからないが、どっちにしろ米軍は自身の空襲が原因で、自分たちの仲間を焼死させてしまったことに変わりはない。GHQがこの刑務所を戦後すぐ閉鎖したのは、そのせいなのかもしれない。

仮面武闘会 costume play




11月1日の渋谷センター街は一面ゴミだらけだ。

 金曜日の夜、スクランブル交差点は百鬼夜行の関が原状態だったらしい。例年、この時期の渋谷には、角や羽の生えた「人に有らざる者ども」が増えるのだけれど、今年は異常だったようだ。渋谷の盛り上がり方は、ハロウィンイベントの元祖ディズニーランドや川崎駅前を超えてしまったのでは。

 今朝のTVニュースで例によって朝のスクランブル交差点の映像を映していた。ナレーションで「ここ渋谷では、まだ昨夜の余韻が残っています。」と言っていたので、早速散歩がてら見に行ってみた。
 もう明るくなっていたセンター街は路上も歩道も一面ゴミ。落ちているというよりは、撒き散らしたという感じ。普段から朝はゴミが目立つ場所だが、今日はゴミ密度がおよそ15倍。早々と掃除が始まった場所には、ゴミ袋の山。標高はいつもの2.5倍。ゴミ清掃ボランティアの人たちも、普段の3倍は動員されていた。お疲れさまです。

 路上のゴミをよく見ると、昨夜のコスプレ衣装もたくさん落ちていた。お約束の角かぶり物はもちろん、セーラームーンの手袋スーパーマリオの靴も落ちていた。るろうに剣心か何かの羽織やディズニーのようなドレスの上下も落ちていたりして、路上で着がえたのかと思うぐらい。
 ハロウィンこす今年のトレンド(というものがあるのもすごいが)は、血と傷口の痛々しい系だったけど、早い話バイオハザードそのままに、渋谷がゾンビであふれかえっていたわけだ。ゾンビと闘った跡なのか、朝のセンター街には武器がいろんな落ちていた。ライトセーバー光線銃、なぜかバットまで。
 落し物探し(?)の帰りに円山町を通っていたら、コスプレしたカップルが宿を探してうろうろしていた。これからコスチュームプレイですか。ふーん、いい時代になりましたね。

 ハロウィンがこんなに燃え上がったのは、今年は31日が金曜日だったせい。来年2015年10月31日は、なんと土曜日だ。コスプレやメイクの時間はたっぷりある。きっと、今年よりすごい風景が見られるに違いない。刮目して待て!