渋谷暗黒巡礼 Dark Pilgrimage in Shibuya

見ようとしても誰にも見えない渋谷、見えてるのに誰も見ようともしない渋谷

January 2016

囚人服と機関銃 LAST DROP OF BLOOD




80年前、渋谷で銃殺刑が行われた。

戦前、渋谷には日本帝国陸軍の刑務所があり、二・二六事件を実行した将校17人が収監されていたことは、以前に書いた。そのとき、死刑執行がどのような方法でどこで行われたか、はっきりわからなかったが、死刑執行前後のリアルな状況をたまたま書いたものをみつけた。はっきりしたことがわからなかったのは、刑の執行日は、軍の極秘事項だったためのようだ。

当時、将校達の葬儀を委託された葬儀屋の家族の証言によると、軍から注文を受けていること自体、世間に知られないようにいろいろ苦心したそうだ。
棺も沢山作らないといけないので、棺が出来上がると次々に店の二階に上げて、人目につかないようにしたとか。棺の搬入も、大八車に載せて刑務所まで何度も往復して、少しずつ運んだそうだ。

刑執行の日取りは、地元の在郷軍人会にも知らされていなかった。ところが、とても意外なところから、情報が漏洩した。
ある日、渋谷の仕出し屋に刑務所から豪華な弁当の注文が多数入った。その話が仕出し屋の亭主から偶然、在郷軍人会メンバーの耳に入った。弁当納入の翌日に刑が執行されるのは間違いない。執行前夜、死刑囚に美味いものを食べさせるというのは、本当だったんだな。。。

刑務所門前の住民の証言によると、処刑当日の早朝、刑務所前にタクシーが停まり、若手将校数人が白い布でくるんだ拳銃を手にして降りてきたそうだ。同世代の将校の手で銃殺させるとは、帝国陸軍も残酷なことを命じるもんだ。某テロ組織の見せしめ目的の銃殺とは違って、組織と規律の維持に不可欠な銃殺だったということか。

在郷軍人会メンバーは、当日早朝から刑務所付近で刑執行の銃声がしないか聞き耳を立てていた。証言では、銃殺の瞬間の様子が生々しく語られている。
「…時間は覚えていないが、突然練兵場内(刑務所の北側は陸軍の練兵場だった)から猛烈な重機関銃、軽機関銃、小銃等の一斉射撃が聞えた。現役兵だった私も空砲をこんな激しく撃った記憶はない。その時間は恐らく一分間に満たないが、断続的に二回、三回と、行われたと記憶している。刑執行の銃声は、猛烈な機関銃の発射音に遮断されて一般人の耳には届かなかった。(出典名確認中)」

将校たちの慰霊碑は、遺族が処刑が行われたあたりの土地の近くに設けたそうだ。ということは、処刑場があったあたりに今、小学校や保育所が建っていることになる。処刑場に子供たちが毎日通っているのはいかがなものか、と思う人もいるだろうが、そういう場所は、東京中にある。池袋サンシャインシティは巣鴨プリズンだったし、隅田川付近は東京大空襲の翌日、焼け焦げて死んだ人の死体を積み上げたピラミッドがいくつもできた場所。
渋谷にも過去、血塗られた時代があったことを思うと、スクランブル交差点のバカ騒ぎも、今の日本が恐ろしく平和なことの証しのように思えてきたりしなかったり。スクランブル交差点を見下ろす位置に、岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」が設置されたのも、なんだか意味深な気がしてきた。





ストリート書き初め New Year ceremony on the street


渋谷では毎年、路上で書き初めが行われる。

明治神宮では毎年、初詣が一息ついてから書き初め展が始まる。文科省、教育委員協議会、朝日新聞等の後援で、全国の小中学生から作品を募集し、特選作品が本殿前回廊に展示される。
そんなオーセンティックでオーソライズされたエキシビション以外にも、渋谷では毎年非公式に、非合法な書き初めが展示される。会場は、商店街や駐車場で、半紙のかわりにシャッターや壁に書かれる。早い話、今年最初に書かれるグラフィティというか、世間で言うところの落書き。

別に新年でなくても、落書きは次々増えているのだが、やっぱり新年の落書きは、書く方にとってもそれなりに普段とは違う意味があるんだと思う。
スローアップとか大きな作品になると、端の方に「14」とか「15」とか年号をよく入れるんだけど、「16」を最初に書き込むとなると、それなりに日と場所を選ぶようだ。元旦早朝のセンター街には、カウントダウンに合わせて書いたと思われるタギング(参上署名)があった。しかも、わざわざ海外からお越しの模様。

書く場所も、お正月なんだから目出度い、目立つ場所に大きく行くものが少なくないんだけど、お正月だからこそ、広々としたカンバスが手に入る、という理由もあるみたい。当然、非合法だけど。
年末の大掃除のついでに、壁やシャッターの落書きを消す(塗りつぶす)商店街も多い。でも塗りつぶしただけでは、ストリート書道家の皆さんに大きな白い紙を提供しているようなもの。年明けには、書初めされてしまっている危険性が高い。また年末~三が日は、都心の屋外駐車場はがら空きになる。車が一台もないと、駐車場は人目のない広々としたアトリエ状態。壁面をダイナミックに使えるチャンス。仕事始めの頃には、大作が陳列されている可能性が高い。もちろん犯罪だけど。

意識的に渋谷のグラフィティを写真に撮り始めたのは、1年前、早朝の竹下通りの情景を見たのが、きっかけだったと思う。日中は、キュートなお店にポップティーンな女の子が溢れるスイートな街にしか見えないけど、早朝はポップなグラフィティのギャラリー状態。原宿恐るべし。
グラフィティの色や形も、お店の看板やオーニング(庇)の色やデザインに、なにげに合わせてあるところがプロの犯行。そのお店がオーダーしたのかと思うぐらいのもある。ここまでいくと、下手に塗りつぶすより、そのままでいいかも。(上手い落書きは、なかなか上書きされない傾向があるし。)それでも、違法だけど。