明治天皇は、渋谷で絞った牛乳を飲んでいた。

青山学院初等部のある辺りは、明治時代、皇室の「御料乳牛場」だった。ここで絞られた牛乳が皇室に運ばれていたそうだ。当時の新聞記事によると、明治天皇は毎日2回牛乳を召し上がっておられたとか。
実は、初めて牛乳を飲んだ天皇は、明治天皇ではない。飛鳥時代の孝徳天皇が最初だそうだ(約1400年前!)。平安時代、冷泉天皇の頃には、京都には「乳牛院」という施設があって、宮中のために牛乳やチーズ(のようなもの)を生産していたらしい。ちな、現在の天皇陛下は、栃木県にある御用牧場で絞った牛乳を飲んでいらっしゃるご様子。

常盤松以外にも、渋谷には乳牛の牧舎があったそうだ。
明治の文豪、国木田独歩は文壇デビュー直前、1年ほど渋谷に住んでいた。場所は、現在アムウェイのビルがある辺りにあった小さな一軒家。そこに、作家デビュー間もない田山花袋が何度も訪れていた。花袋の「東京の三十年」によると、独歩は彼が訪ねてくると、縁側から隣の牛乳屋に声をかけて、絞りたての牛乳を取り寄せて、コーヒーミルクを作ってくれたそうだ。
牛乳屋と牧舎があったのは、井の頭通り沿い。今は屋外駐車場になっている。通り沿いには、自動販売機が壁のように並んでいるので、缶コーヒーなら飲めます。

(詳細は、こちらで!→渋谷・時空探究

とはいっても、当時、東京では牧場や牧舎は珍しいものではなかったようだ。
牧畜業は、明治初期、欧米から入ってきた流行りの事業だったらしく、今世紀初めのITベンチャーブームみたいな感じで、華族や士族が多数、牧場や牛乳屋を始めたそうだ。冷蔵庫も冷蔵車もない時代なので、大消費地=東京にも牧場や牛乳屋が続々とできた。おかげで明治の東京人は、北海道まで行かなくても、フレッシュな牛乳をいつでも飲むことができた。(もっとも、一般庶民が日々飲めるぐらい値段が下がったのは、大正に入ってからだったけれど。)

今はさすがに、渋谷で牛乳は作っていないが、チーズは作っているところがある。
 「渋谷チーズスタンド
お店のコンセプトは「街に出来たてのチーズを」。店内でフレッシュ・チーズを毎日手作りしている。店の場所は、国木田独歩邸のすぐ近く。100年前「街に出来立てのミルクを」提供していた場所の直近にあるというのは、偶然なんだろうか?
ちなみに、渋谷チーズスタンドの牛乳は、都内の牧場から配送しているそうだ。現在都内には1軒しか牧場がないから、きっと大泉学園の小泉牧場で絞った牛乳だと思う。