日本のダーク・ツーリズムの夜明け。

2010
年頃からダーク・ツーリズムという言葉も日本でも使われるようになってきた。東日本大震災がきっかけになったのだと思う。
ダーク・ツーリズムは、戦災や大災害、大事故にまつわる場所(現場、跡地、慰霊碑、資料館など)をツアーするのだが、そういう悲惨な歴史・事件を直視したり、追体験するきっかけになるところに意義があるらしい。

英国発(しかもスコットランドのグラスゴー)の概念だから、英国人の好きな「幽霊屋敷ツアー」的な怖いもの見たさツーリズムの側面がないとは言えない。提唱する学者達も、不純な動機がなくはない辺りは認めた上で、だとしても、ダークな場所に行ってみれば大きな学びがあると考えているようだ
 

日本でのダーク・ツーリズムの代表的な目的地は、広島、長崎、沖縄の太平洋戦争戦災跡(皆忘れているが、3/10は東京大空襲の日。東京の下町で10万人が一夜で亡くなった。翌日の朝には、道端には黒焦げの母・子が抱き合ったまま立っていたり、隅田川が水死体で水面が見えなかったという。広場には黒焦げの死体のピラミッドがいくつもできた。東京大空襲資料館はもっと来館者が増えた方がいいと思う。)がだろう。修学旅行先のメッカでもあるから、教育的効果はあると思われているのだろう(生徒の感想は、まぁ別だが。)今は、それに三陸海岸の津波被災地が加わった。
戦災や災害は、めったにはないが忘れてはならない歴史的事件だと思う。そこまで大きな被害が出たわけではないが、その場で人が死んだり、苦しんだりした場所は、探してみると、結構身近なところにあって驚いてしまう。歴史のある都市だとなおさら。京都なんて、どこを掘っても応仁の乱で焼け落ちた家々が埋まってそうだ。
 

そういう不吉な場所を巡るのも、ダークツアーと考えてもいいと思う。戦災や大災害ほど大事件でなくても、その場所のダークな歴史や事実を知ることも、悪くなくもないかもしれない。
‘00年代半ばから、アニメの聖地巡礼が始まったが、それにかこつけて経産省や観光業界がコンテンツ・ツーリズム()とか言い出した。最近では神奈川県が聖地誘致にがんぱっているようだ(昔から学園モノは神奈川県が舞台というイメージ)。ツーリズムと言うと、地方都市の観光振興や、日本への海外旅行客誘致のように、飛行機や鉄道で移動して泊りがけの旅行レベルをイメージしてしまう。個人的には聖地巡礼の方が、日本人の旅行感覚(ツアーというよりトリップ)に合っているような気がする。ダーク・ツーリズムも聖地巡礼の一種として、暗黒聖地巡礼とでも呼ぶのもいいかなと思う。