日本最古の薔薇園が、渋谷にある。

場所は、京王井の頭線のトンネル出口付近。正確に言うと目黒区駒場なのだが、渋谷駅から直線距離1000mぐらいなので、渋谷圏内としておいてほしい。
このあたりに住んでいない限り、ここを通りがかることは、まずないといっていいぐらい、辺鄙というと失礼だけど、わかりにくい場所にある。駒場在住70年の方でも、生まれてこの方、ずっと存在を知らなかったぐらい。ここに10年ぐらい前までは、薔薇園が広がっていたようだ。当時は、300種3万本(!)のバラが植えられていたそうだ。開園は1911年(明治44年)だから、100年以上の歴史がある。
現在は、宅地化してバラ園の面積は縮小したが、道沿いにバラの垣根があるから、通りがかれば、すぐそれとわかる。周辺の住宅の庭や垣根にもバラの花が目立つ。ここでバラの苗を買うと、オーナーがバラの育て方も丁寧に教えてくれるからかもしれない。

駒場ばら園から見て、京王井の頭線を挟んだ向う側は、東大駒場キャンパスが広がっている。
実は、ここが駒場キャンパスになる前は、大部分が農場だった。駒場キャンパスはもともと、東大農学部の母体となった駒場農学校(1873年=明治6年開校)だった場所。駒場キャンパスだけでなく、東大リサーチキャンパス、駒場公園、駒場野公園、都立国際高校のあたりも、農学校の敷地だった。



1897年に名前が東京帝国大学農科大学に変わったが、1935年まで、キャンパスの大部分は演習・研究用の農場だった。植物園や果樹園、園芸場の他、放牧地や家畜病院もあった。農場の名残は、駒場野公園の中に残されている。
ばら園の開園は1911年だから、農科大学と人的・技術的なつながりがあった可能性はないとはいえないと思う。大学の園芸場で品種改良されたバラの苗が、バラ園に提供されていたかもしれない。多少おおげざかもしれないが、駒場は日本の近代花卉産業の発祥の地だということにしておきたい。

ところで、薔薇と言えば、思い出すマンガは「ローゼンメイデン」。ローゼンメイデンと言えば、ローゼン閣下こと麻生外務大臣。麻生外務大臣のお住まいといえば、松涛。麻生邸の庭に咲いている薔薇の中には、この薔薇園から供給された株もあるかもしれない。なにせ、徒歩5分のご近所ですから。
たぶん、ローゼンメイデンと言えば、球体関節人形を思い出す人もいると思うけど、日本における球体関節人形のメッカは、原宿だったりする。(渋谷と人形編につづく)