ちょうど10年前の12/28、下半身だけの死体が宇田川遊歩道脇に捨てられていた。

この殺人事件は、後に「新宿・渋谷エリート殺人事件」としてマスコミに大きく取り上げられ、その裁判までも注目を集めた。殺されたのは外資系企業に勤める30歳男性。犯人はその年上妻。殺害現場は、二人の自宅。代々木公園のすぐ近く、井の頭通りに面した新しいマンションだった。
死体の上半身が200612/16に西新宿で発見された。遅れて12/28に下半身が富ヶ谷の深町交番付近の空き家の庭で発見される。翌2007年、1/10に犯人は逮捕された。その後、死体の頭部は発見されたが、両手首は見つかっていない。
下半身の遺棄場所は、阿部首相の自宅もすぐ近く。坂を下って約4分という距離。そういうと高級住宅街のような感じがするが、同じ富ヶ谷1丁目でも、神山通りより西側(高台側)と東側(宇田川遊歩道周辺)では、地価はかなり違う。宇田川遊歩道沿いは、もともと地盤が弱く、大きな邸宅はない。2010年の地震でも、現場の23軒隣のアパートの土台がひび割れ、斜めに傾いた。
現場周辺エリアは、昔「深町」と呼ばれており、いまも交番や祭りの神輿に名前を残している。このあたりが、底なしの沼田だったことが、その町名の由来というぐらい、ずぶずぶの低湿地だったらしい。

犯人は、頭や上半身はタクシーや電車で自宅から離れた場所に運んでいるが、下半身は運ぶのに疲れて近所に捨てたらしい。計画的にあの場所を選んだわけではなさそうだが、地形的にじめっとした、風水的に陰にこもった、あの場所に捨てたのは、なんとも的確だったと思う。ゲニウス・ロキというか、なんというか、常軌を逸した極限の精神状態になると、人は無意識にそういう場所の匂いを嗅ぎ付けられるのかもしれないと思いたくなる。

現在、死体遺棄現場となった民家は取り壊され、雑草が生い茂っている。門とブロック塀は残されているが、残された倉庫と隣の家の壁には、落書き(グラフティ)がデカデカと描かれている。転売される気配も、建替えられる様子もない。
一方、殺人現場となった犯人と被害者の自宅マンションは、いまもきれいなままだ。「両手首のない幽霊が出る」といった噂は聞いたことはないが、その部屋をAirbnbで貸し出したら、亡霊好きのイギリス人が殺到するかも。代々木公園近いし、原宿、渋谷にも歩いていけるし。

実は、渋谷には殺人現場を貸し出しているアパートがあったりする。